近年、多くの企業が外国人労働者(外国人材)を積極的に採用していますが、その一方で高い離職率が課題となっており、労働力不足の解消や多様性の推進を目指す企業にとって深刻な影響を及ぼしています。
本記事では、外国人労働者の定着率が向上しない理由を分析し、その課題を解決するための具体的な施策を6選や、外国人労働者が働きやすい職場環境を整え、離職率を改善するためのヒントなどをご紹介します。
外国人労働者の定着率と離職率の現状
日本の労働市場において、外国人労働者は欠かせない存在となっていますが、その採用が進む一方で、離職率の高さが問題視されています。
特に、慣れない環境や言語の壁、サポート不足などが、外国人労働者の職場定着を難しくし、定着率が低下することで、企業には採用や育成にかかるコストの増加や、生産性の低下といった課題が生じます。
一方で、定着率が高まれば、多様な価値観やスキルを活かし、企業の成長に貢献する可能性が広がります。
ここでは、外国人労働者の離職率と定着率の現状、そして離職が多いことによる影響について詳しく解説します。
外国人労働者の離職率
外国人労働者は、日本人と比較して離職率が約3倍高いと言われており、厚生労働省の「直接雇用の外国人労働者の入職、離職状況」によると、過去1年間の外国人労働者の入職と離職が、入職者:74,612人・離職者:59,862人でした。
前年と比較すると、入職者の増加率は17.8%で、離職者の増加率は21.5%となり、入職率は、過去1年間に直接雇用された外国人労働者数に対する割合で57.2%、離職率は、45.9%となります。
多くの外国人労働者が入社後数年以内に離職しているケースが多く見られ、その背景には、言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさ、採用時に提示された条件と実際の業務内容のギャップ、企業内での孤立感やサポート不足など、複数の要因が絡み合っています。
特に、技能実習生の離職率は高く、業界や地域によっては他の労働者層と比較して顕著な傾向が見られます。
離職率の高さは、企業側にも大きな影響を及ぼし、採用や研修にかかるコストが無駄になるだけでなく、職場のチームワークが損なわれる可能性もあります。
また、離職者が増えることで、外国人労働者全体の印象や企業の評判が悪化するリスクも伴います。
このような現状を改善するためには、離職に至る原因を深く理解し、外国人労働者が働き続けたいと思える環境作りや、企業と労働者が共に成長できる関係を築くことが重要です。
外国人労働者の定着率
外国人労働者の定着率は、企業にとって採用後の重要な指標となり、定着率が高い職場では、労働者が長期間にわたり安心して働ける環境が整備されており、その結果、企業の生産性や職場の安定性が向上します。
しかし、現在の日本の状況を見ると、外国人労働者の定着率には課題が多く、業界や職種によって大きなばらつきが見られ、特に特定技能のような一部の労働者層では、途中で契約を終了するケースが後を絶ちません。
日本では、外国人労働者の数が増加しており、2023年末時点で約200万人を超えていますが、離職率は依然として高く、2023年には約44.5%に達しています。
企業にとって定着率の向上は、単なる人材確保の観点を超え、外国人労働者とともに成長する姿勢が求められ、安定した労働環境を築くことが、長期的な企業の発展を支える鍵となります。
外国人労働者の離職が多いことで起きる問題
外国人労働者の離職率が高いことは、企業に多くの問題を引き起こします。
特に外国人労働者の場合、言語や文化の違いに対応するための特別な研修が必要となることが多く、離職が続けば、採用や研修にかかるコストが無駄になり、企業の財政的負担が増大します。
また、頻繁な離職により職場内の人員不足が発生し、他の従業員に過剰な負担がかかることでモチベーションの低下や生産性の低下につながる恐れもあります。
さらに、外国人労働者の離職が増えると、企業や業界全体の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。
例えば、「外国人が長続きしない職場」と認識されることで、将来的な採用活動に支障が出ることも考えられますし、離職が原因で顧客対応や業務品質に問題が生じれば、企業の信頼性や競争力に大きなダメージを与えることにもなりかねません。
こうした問題を防ぐためには、離職に至る原因を早期に把握し、外国人労働者が働き続けやすい環境を整備することが不可欠です。
外国人労働者の定着率が向上しない理由
外国人労働者の定着率が向上しない背景には、入社後のサポート体制の不十分や企業文化や職場の人間関係に馴染めないなど、さまざまな要因が絡んでいます。
ここでは、外国人労働者が職場に定着できない7つの理由について解説しますので、外国人労働者との信頼関係を築くための一歩としてお役立てください。
サポート不足
外国人労働者が職場に定着できない理由として、サポート体制の不足が大きな課題となっています。
日本で働く外国人にとって、言語や文化の違い、生活環境の変化は大きなストレス要因となり得ますが、多くの企業では、これらの課題に対応する十分な支援が整っていないのが現状です。
例えば、社内の掲示物が日本語のみで書かれていたり、日常業務や生活面での相談窓口が不明確であったり、研修や説明が多言語対応がされていない場合など、職場内での孤立感や適切なコミュニケーションの不足が、離職の原因になることも多いです。
企業が労働者に対して丁寧なサポートを提供することで、安心して働ける環境が整い、結果として定着率の向上につなげることができます。
待遇への不満
外国人労働者が職場を離れる理由の1つに、待遇への不満が挙げられ、給与や福利厚生が期待に満たない場合、労働者は不公平感を抱きやすくなります。
特に、日本人労働者と比較して給与が低かったり、残業が多いにもかかわらず適正な手当が支払われない、といったケースは、外国人労働者にとって大きな不満要因となります。
また、昇給や昇進の機会が限られていたり、あるいは正社員登用の可能性が低いといった状況では、長期的なモチベーションを維持することが難しくなります。
さらに、福利厚生面で外国人特有のニーズが考慮されていない場合、生活面での不便がストレスにつながることもあるので、こうした待遇面の課題を改善し、外国人労働者が安心して働ける職場環境を整えることが重要となります。
業務内容のミスマッチ
外国人労働者の離職理由として、業務内容のミスマッチも大きな要因の1つとなり、採用時に提示された仕事内容と、実際に任される業務が異なる場合、労働者は不満や不信感を抱きやすくなります。
例えば、「専門的なスキルを活かせる業務」と聞いていたのに、実際には単純作業が多い場合や、予期せぬ肉体労働を求められるケースや、仕事内容が明確に説明されないまま業務を行うことで、労働者は目標を見失い、モチベーションが低下することもあります。
このようなミスマッチを防ぐためには、採用時に業務内容を具体的かつ正確に伝えることや、定期的な面談・フィードバックを通じて、労働者の期待や希望を把握し、適切な役割を与える努力が求められます。
企業文化や人間関係に馴染めない
外国人労働者が離職する理由として、企業文化や職場の人間関係に馴染めないことも挙げられます。
日本の職場には、暗黙のルールや特有のコミュニケーションスタイルが存在し、それを理解し適応することに苦労する外国人労働者も少なくありません。
例えば、上下関係やチーム内の役割分担、あるいは「察する文化」への対応が求められる場面で、誤解や疎外感を抱くケースや、文化的な違いを理由に偏見を持たれたり、同僚や上司との交流が限定されたりすることで、職場で孤立感を感じることもあります。
これらの課題を解決するためには、受け入れ側である企業だけでなく、外国人労働者自身も含めた「双方向の異文化理解」が重要です。
企業は、多様性を受け入れる職場づくりを進めるとともに、研修やワークショップを通じて従業員全体が異文化を理解する機会を設ける必要があります。
一方、外国人労働者に対しても、日本の文化や職場環境を学ぶサポートを行い、適応を助ける取り組みが求められます。
このように、双方が互いを理解し歩み寄る姿勢を持つことで、外国人労働者が安心して働ける環境が整い、離職率の改善につながります。
キャリアを形成しづらい
外国人労働者の離職理由には、キャリア形成の難しさも大きく関係しています。
多くの外国人労働者は日本で長期的に働きながらスキルを磨き、キャリアアップを目指したいと考えていますが、現実には昇進の機会が限られていたり、専門スキルを活かすポジションが提供されなかったりする場合が少なくありません。
また、長期間同じ業務を繰り返すだけで、新たな挑戦や成長を感じられない環境では、労働者のモチベーションが低下し、日本特有の「年功序列」や「終身雇用」の慣習が、外国人労働者にとってキャリア形成の壁となることもあります。
こうした課題を解決するためには、スキルアップのための研修やキャリアパスの明確化、公平な評価制度を整備し、労働者が未来への希望を持てる職場づくりが大切です。
差別的な扱いを受ける
外国人労働者の定着率を低下させる要因の1つに、言語や文化の違いを理由に、外国人労働者が不当な扱いを受ける、差別的な扱いが深刻な問題となっています。
例えば、日本人と同じ仕事をしていても給与や昇進の機会に格差があったり、職場での意見の軽視など、日常的なコミュニケーションの中で、無意識の偏見や排他的な態度を感じることで、精神的なストレスを抱えることも少なくありません。
これらの経験は、外国人労働者の働く意欲を損ない、結果として離職につながることが多く、このような問題を解決するためには、企業全体で差別を許さない風土を醸成することが重要です。
多様性を尊重する教育や研修を導入し、公平な評価や対話を促進することで、外国人労働者が安心して働ける環境を築くことが求められます。
高い日本語能力を求められる
外国人労働者が職場に定着しづらい理由として、高い日本語能力を求められることが挙げられます。
多くの職場では、業務上必要な会話や文書作成において高度な日本語スキルを前提としていますが、それは外国人労働者にとって大きな負担となります。
特に、専門用語や敬語の使用、ニュアンスを読み取る能力が求められる環境では、コミュニケーションに支障をきたしやすくなります。
その結果、労働者は自信を失ったり、孤立感を感じたりすることが増え、最終的に離職を選ぶケースも少なくありません。
こうした問題を解消するためには、やさしい日本語を活用する工夫や、多言語サポートツールの導入、日本語学習支援プログラムの提供が有効です。
外国人労働者の定着率を高める施策6選
外国人労働者の定着率を向上させるためには、具体的で効果的な施策を講じることが重要で、働きやすい環境を整えることで、労働者のモチベーションと満足度を高め、離職率を下げることが期待できます。
ここでは、外国人労働者の定着率を高める、6つの具体的な施策をご紹介します。
AIを活用したサポートツールの活用
外国人労働者の定着率を向上させるためには、AIを活用したサポートツールの導入が有効です。
例えば、AI翻訳ツールを活用することで、職場内での言語の壁を緩和し、業務の指示やコミュニケーションを円滑に進めることができ、AIを活用したチャットボットを導入することで、労働者が日常業務や生活面での疑問を即時に解消できる環境を提供することが可能です。
さらに、AIによるタスク管理ツールを利用することで、外国人労働者が業務内容を明確に把握し、効率的に働けるよう支援することもできます。
これらのツールを積極的に導入することで、外国人労働者が安心して働ける環境を整えるとともに、企業の生産性向上にもつながります。
株式会社ObotAIが提供する「チャットブリッジ」は、AIを活用した文化翻訳(カルチャートランスレーション)で、企業のルールやミッション、異文化における習慣やマナーを考慮して翻訳を行うことができます。
これにより、従来の通訳者だけでは難しかった、正確で文化的背景を理解したコミュニケーションが可能となり、意思疎通の問題を解消できます。
◎LINE上で無料で利用ができ、誰でも簡単に扱える設計!
◎職場での多文化共生を実現
◎会話履歴のデータを活用して多言語FAQや社内マニュアルの自動生成ができる
ダイバーシティマネジメントの推進
ダイバーシティマネジメントの推進は、外国人労働者の定着率を高める上で重要な施策となり、多様なバックグラウンドを持つ労働者が協力し合い、互いに尊重しながら働ける職場環境を構築することで、安心感と働きがいが生まれます。
具体的には、異文化理解を深めるための研修やワークショップの実施、外国人労働者の声を反映させるための意見交換の場を設けることが有効です。
また、偏見や差別を防ぐためのポリシーを明確にし、全社員がそれを遵守する文化を育てることが求められます。
これにより、外国人労働者だけでなく、全ての従業員が働きやすい環境を実現でき、企業全体の活力や生産性向上にも寄与します。
定期的なコミュニケーションの実施
定期的なコミュニケーションの実施は、外国人労働者の定着率向上に欠かせないもので、これにより、労働者の業務に対する不安や課題、キャリアに関する希望を直接聞き取ることができます。
特に外国人労働者にとって、言語や文化の違いが原因で職場での悩みを抱えやすいため、こうした機会は重要です。
また、定期的なコミュニケーションを行うことで、早期に問題を発見し、適切なサポートを提供することが可能になり、労働者が自分の意見や感情を企業に伝えられる環境は、信頼関係の構築にもつながります。
企業側もフィードバックを活用し、労働環境の改善や適切な評価基準の見直しを行うことで、外国人労働者がより働きやすい環境を提供できます。
明確な評価基準
明確な評価基準の設定は、外国人労働者のモチベーションと定着率を向上させるのに重要で、不透明な評価や曖昧な基準は、労働者に不公平感を抱かせ、働く意欲を低下させる原因となります。
一方、具体的で公平な評価基準を設けることで、労働者が自分の努力や成果を正当に評価されていると感じられる環境を提供できます。
例えば、業績やスキルアップの達成度に基づく明確な指標を導入し、それに基づいて昇進や給与を決定したり、評価内容を面談などを通じてフィードバックすることで、労働者は自身の成長ポイントを把握し、さらに向上を目指すことができます。
このような仕組みを整えることで、外国人労働者が長期的に働き続けられる職場環境を築けます。
労働環境や給料体系の見直し
労働環境や給料体系の見直しは、外国人労働者の定着率向上において極めて重要なポイントで、不十分な労働環境や不公平な給与設定は、外国人労働者の不満を生み、離職の原因となりやすいです。
例えば、過度な残業や休暇の取りづらさ、福利厚生の不足は、労働者の生活の質を低下させ、同じ業務を行っていても日本人労働者と給与に差がある場合、労働者のモチベーションがさらに低下します。
これを防ぐためには、業務負担を軽減するための仕組みや、平等な給与体系の導入が求められ、外国人労働者に特化した福利厚生や生活支援制度を整えることで、安心して働ける環境を提供できます。
日本語学習のサポート
職場での円滑なコミュニケーションを図るためには、日本語能力の向上が必要ですが、独学で習得するのは時間と労力がかかります。
そのため、業務終了後の日本語教室の開催や、オンライン学習ツールの提供など、企業が学習機会を提供することが重要となります。
また、業務で必要な言葉や表現に特化した教材を用意することで、労働者が実践的なスキルを効率よく身に付けられる環境を整えることができます。
こうした取り組みは、労働者の自信と働く意欲を高めるだけでなく、職場全体のコミュニケーションを活性化させ、定着率向上につながります。
キャリアアップ支援
労働者が自身の成長や将来のキャリアに希望を持てる環境を提供することで、仕事へのモチベーションを高め、離職を防ぐことができます。
具体的には、スキルアップのための研修プログラムや資格取得支援、社内昇進の機会を積極的に提供することが有効です。
また、個々の目標に応じたキャリアプランを共に設計し、定期的な面談を通じて進捗を確認するなどの取り組みを通じて、外国人労働者は自分が企業にとって価値ある存在であると実感し、長期的に働き続ける意欲を持つことが期待されます。
外国人労働者とのコミュニケーションポイント
外国人労働者との円滑なコミュニケーションは、職場での信頼関係を築き、定着率を向上させるために欠かせません。
ここでは、3つの「外国人労働者とのコミュニケーションポイント」を解説します。
相手の文化や価値観の理解
相手の文化や価値観を理解することは、外国人労働者とのコミュニケーションを円滑にするための第一歩となります。
文化の違いは、働き方やコミュニケーションスタイル、価値観に大きく影響を与えるので、相手の背景や考え方を知り、尊重する姿勢を持つことが重要です。
例えば、宗教的な習慣や祝祭日、食習慣に配慮することは、相手に安心感を与えるだけでなく、信頼関係を築く助けにもなります。
また、異文化理解を深めるためには、社員全体で学べるワークショップや研修を実施することが効果的で、こうした取り組みを通じて、外国人労働者が自分の文化が尊重されていると感じる環境を作り出すことが、働きやすい職場作りにつながります。
ストレートな言葉で伝える
外国人労働者とのコミュニケーションでは、ストレートな言葉で伝えることが非常に効果的です。
日本語の曖昧な表現や遠回しな言い方は、文化背景の異なる人には意図が伝わりにくい場合があるので、シンプルで分かりやすい言葉を選び、具体的に伝えることが大切です。
例えば、「なるべく早く」ではなく「明日までに提出してください」といった明確な指示を出すことで、相手が混乱せずに対応できます。
また、相手に伝わっているか確認するために、相手の言葉で説明してもらう「ペーパーリング(確認のための繰り返し)」を取り入れることも有効です。
こうした工夫をすることで、誤解を防ぎ、スムーズな業務進行につなげることができます。
相手の母国語や「やさしい日本語」を取り入れる
外国人労働者とのコミュニケーションをより円滑にするためには、相手の母国語や「やさしい日本語」を取り入れることが効果的です。
母国語を活用することで、労働者は自分の意見や考えを正確に伝えやすくなり、企業側も正確な情報を得ることができます。
また、もし日本語を使用する際には、専門用語や難解な表現を避け、簡単で分かりやすい「やさしい日本語」を使うことで、相手の理解を助けます。
さらに、翻訳アプリやツールを活用することで、コミュニケーションの精度を高めることも可能です。
まとめ
外国人労働者の定着率を向上させるためには、企業が積極的に課題を把握し、適切な施策を講じることが不可欠です。
離職率の高さはサポート不足や文化の違いなど、さまざまな要因に起因しており、それを解決するには包括的なアプローチが必要です。
当社では、AIを活用した文化翻訳(カルチャートランスレーション)で、企業のルールやミッション、異文化における習慣やマナーも考慮して翻訳を行う「チャットブリッジ」というツールを提供しています。
チャットブリッジは、LINEなどのSNSを活用し、特定技能外国人や技能実習生と企業の間でスムーズな意思疎通を実現し、企業と外国人労働者双方にとって良好な関係を築き、従来の通訳者だけでは難しかった、正確で文化的背景を理解したコミュニケーションが可能となります。
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