日本の深刻な人手不足に対応するため、2019年に「特定技能制度」が導入されました。この制度により、アジア諸国を中心とした外国人材の受け入れが進められています。
その中で注目されつつあるのが、スリランカ出身の人材です。英語教育に力を入れているスリランカでは、日本語学習の機運も高まっており、「日本で働く」ことが現実的なキャリアパスとして浸透しつつあります。
本記事では、スリランカの特定技能人材が増加する理由や採用や受け入れ対策について解説します。
スリランカ 特定技能人材の現状
日本の特定技能制度を活用してスリランカ人材を受け入れている企業は、年々増加傾向にあります。特に、介護、製造業、建設業、宿泊業など、人手不足が深刻な分野での採用が目立ちます。
ここでは、スリランカの特定技能人材の現状について詳しく解説します。
特定技能制度の導入による日本に往来するスリランカ人の増加
近年、日本に渡航するスリランカ人の数は着実に増加しています。日本政府が公表した出入国在留管理庁のデータによると、留学、技能実習、就労(特に特定技能)といった目的での入国が目立っています。
特に注目されるのは、2019年に開始された「特定技能制度」の導入以降、スリランカ人の就労目的での来日が顕著になっている点です。日本国内での少子高齢化や人手不足を背景に、スリランカを含むアジア諸国からの労働力受け入れが加速しており、その一環としてスリランカ人が重要な役割を担い始めています。
また、スリランカ国内でも日本語教育に力を入れる教育機関が増え、若年層を中心に「日本で働くこと」が現実的なキャリア選択肢となりつつあります。このような背景から、今後さらにスリランカ人の日本への往来が活発になることが予想されます。
特定技能制度におけるスリランカ人の位置づけ
特定技能制度は、一定の専門性や技能、日本語能力を持つ外国人労働者を受け入れるために設けられた在留資格であり、特に人手不足が深刻な14の業種において外国人材の活用が進められています。
その中でスリランカ人は、他のアジア諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)に比べてまだ受け入れ人数としては少数ですが、今後の伸びが期待される存在です。
特に、スリランカの若者は英語教育を受けており、日本語の習得にも比較的積極的で、介護・宿泊業・建設業といった分野での活躍が見込まれています。
また、スリランカ政府も日本への人材派遣に積極的な姿勢を見せており、送り出し機関の整備や現地の日本語教育機関との連携が進められています。
日本企業側からも、真面目で協調性のあるスリランカ人材への評価は高まりつつあり、今後の制度活用において「期待の新興勢力」としての位置づけが強まる可能性があります。
スリランカとの特定技能制度における二国間協定
2019年、日本とスリランカの間で特定技能における二国間の協力覚書が締結されました。
ここでは、特定技能における日本とスリランカの二国間協定の内容について、詳しく解説します。
二国間で共有される情報
特定技能制度に基づく外国人材の円滑かつ適正な受け入れを実現するため、日本とスリランカの間では、さまざまな情報が二国間で共有されています。
これには、スリランカ人材の送出しに関する基本情報や、送り出し機関の登録状況、候補者の技能・日本語能力、職歴や学歴といった個人の適性に関する情報が含まれます。
また、日本側の受け入れ企業や登録支援機関の情報もスリランカ政府と共有されることで、透明性の高い人材マッチングが実現され、ブローカーや悪質な仲介業者の介在を防ぐ効果も期待されています。
このような情報共有体制は、労働者保護と制度の信頼性を両立させる上で、重要な役割を果たしています。
二国間で協議される情報
日本とスリランカの間では、特定技能制度の運用に関して定期的な協議も行われています。協議の内容は、送り出し・受け入れに関わる制度運用の改善点、労働者の処遇や労働環境に関する状況報告、技能試験や日本語試験の実施状況とその質の向上など、多岐にわたります。
また、制度に関連するトラブル事例や、送り出し・受け入れの過程で発生した課題についても両国間で情報を共有し、解決に向けた協力体制を築いています。
これにより、スリランカ人がより安心して日本で働ける環境を整えると同時に、受け入れ企業側にとっても安定した人材確保につながる仕組みが形成されています。
二国間の特定技能試験の誓約
スリランカと日本の間では、特定技能制度に基づく技能試験および日本語試験の実施に関して、両国政府が責任を持って管理・運営することを誓約しています。
この誓約には、公正かつ透明な試験運用を担保し、特定技能制度の信頼性を確保するという重要な目的があります。
具体的には、試験の実施主体や会場の設定、試験の難易度や内容に関する基準の共有、そして試験結果の正確な通知などについて、スリランカ政府と日本の関係機関が連携して対応する仕組みが整えられています。
また、不正行為や試験結果の改ざんなどを防ぐための監視体制や苦情対応の仕組みも設けられており、これによってスリランカ人材が正当なプロセスを経て日本で働くことが可能となっています。
スリランカにおける教育の特徴と国民性
特定技能制度の拡大に伴い、スリランカから来日する外国人材は注目を集めています。
ここでは、スリランカにおける教育の特徴と国民性について詳しく解説します。
スリランカの教育・言語について
スリランカは高い識字率と整備された教育制度を持つ国であり、多くの若者が安定した基礎教育を受けています。識字率は90%を超え、南アジア諸国の中でも比較的教育水準が高いとされています。
スリランカ政府は、教育を重視しており、初等教育から中等教育までは原則として無償で提供されています。
スリランカの教育制度は次のような年次構成になっています。
- 初等教育(Primary Education):5歳~10歳(Grade 1〜5)
- 中等教育(Junior Secondary):11歳~13歳(Grade 6〜9)
- 高等中等教育(Senior Secondary):14歳~16歳(Grade 10〜11)
- 大学進学前の高等教育(Collegiate Level):17歳~18歳(Grade 12〜13)
高校卒業後は、大学進学を目指す学生の多くが、国家試験であるGCE A-Level(General Certificate of Education Advanced Level)を受験し、成績によって国立大学などへの進学が決まります。
言語面では、スリランカには主にシンハラ語・タミル語・英語の3言語が存在します。
- シンハラ語:国民の約70%を占めるシンハラ人が使用
- タミル語:主に北部・東部に居住するタミル人が使用
- 英語:準公用語として、教育・ビジネス・行政の分野で広く使用される
このような多言語環境で育つため、スリランカ人は自然と複数言語を使いこなす力を身につけており、外国語学習への適応力が高い傾向にあります。
特に、近年では日本語教育への関心が高まっており、日本への就労や留学を目指す若者を対象にした日本語学校も増加しています。
国際交流基金が実施する「日本語能力試験(JLPT)」や、特定技能制度で必要となる「日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の受験者も年々増加しており、日本語学習のニーズは拡大中です。
こうした教育背景と言語的な柔軟性は、スリランカ人材が日本の職場においても順応しやすく、特定技能制度を通じた即戦力人材としての期待を高めています。
国民性について
スリランカの人々は、温厚で勤勉、そして家族や地域社会とのつながりを大切にする国民性を持っています。
仏教徒が国民の約7割を占めていることもあり、穏やかで思いやりのある性格が多く見られ、日常生活においても礼儀正しく、他者への配慮を重視する傾向があります。
また、スリランカ人は「協調性」に富んでおり、集団の中でのバランスや和を重んじる文化が根付いています。
これは、日本の職場文化にも近い側面があり、組織の一員として順応しやすいと評価される要因のひとつです。仕事に対しては真面目で責任感が強く、ルールや約束を守る姿勢もあります。
一方で、時間の感覚や表現の仕方に関しては、日本とは異なる面もあります。
例えば、スリランカでは時間に対して比較的おおらかな傾向があり、表現もストレートかつフレンドリーなことが多いため、初対面での印象が少し異なると感じる場面もあります。
ただし、これは文化的な違いであり、適切な指導や相互理解によって円滑な関係性を築くことが可能です。
宗教や伝統を尊重する姿勢も強く、特に仏教の祭日や宗教行事は大切にされます。そのため、宗教や文化に対する理解を深めることは、雇用する側にとっても重要な配慮ポイントとなります。
特定技能でスリランカ人を採用した際の課題
特定技能制度に基づいて活躍する外国人材は増加傾向にありますが、一方で、課題やトラブルが発生するケースも多く見受けられます。
ここでは、スリランカ人を採用した際に生じる課題について解説します。
言語・文化の違いによるコミュニケーショントラブル
特定技能制度を通じてスリランカ人を採用する際、企業が直面する課題の一つが「言語と文化の違いによるコミュニケーショントラブル」です。
スリランカでは、英語が広く使われており、母国での日本語教育も徐々に普及しているとはいえ、来日直後の日本語能力には個人差があります。
そのため、業務指示や安全に関わる重要な伝達が正しく理解されないケースがあります。
また、文化的背景の違いも誤解を生みやすい要因です。例えば、日本では「空気を読む」「察する」といった曖昧なコミュニケーションが重視される場面が多く見られますが、スリランカではより率直な表現が一般的なため、感情表現や反応の仕方にギャップが生じることもあります。
例えば、ObotAIが提供している「チャットブリッジ」は、母語であるシンハラ語に対応しており、日常的な会話から業務指示まで双方向に翻訳可能です。
また、現地送り出し機関との連携を強化し、入国前からの翻訳支援や異文化理解の教育を行うことも、定着率の向上に効果的です。コミュニケーションの壁を越える工夫が、職場の安心と生産性につながります。
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企業の受け入れ体制が不十分なことによるトラブル
企業の受け入れ体制が不十分な場合、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
特定技能人材は、一定の日本語能力や専門的な技能を持っていますが、日本での生活や職場環境にはまだ不慣れであり、適切な支援が必要です。
しかし、企業側がその点を十分に理解していない場合、具体的な支援体制が整わず、問題が顕在化します。
たとえば、生活支援(住居の手配、役所での手続き、交通機関の利用方法など)が不十分で、外国人材が孤立してしまうケースがあります。
また、職場での研修が形式的で、業務内容や安全ルールが十分に伝わらないことで、作業ミスや労災につながることもあります。
さらに、支援責任者や通訳の配置が不在、もしくは機能していない場合、問題の早期発見や対応が遅れ、退職や契約トラブルに発展することもあります。これにより企業側も採用コストの損失や職場の混乱といったリスクを抱えることになります。
こうしたトラブルを防ぐには、特定技能人材の採用前から「受け入れ準備」と「継続的なフォロー体制」の整備が不可欠です。
文化的背景や宗教、生活習慣にも配慮した受け入れ方針を設け、さまざまなツールを活用しながら、支援体制を企業全体で共有・実施していくことが、安定した就労と長期定着のカギとなります。
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スリランカ人材と共に働くために必要な「翻訳・支援体制」の準備
スリランカ人材を特定技能で受け入れる際には、言語対応だけでなく、長期的な視点での支援体制の構築が不可欠です。
とくに、母語であるシンハラ語による翻訳サポートは、業務の指導にとどまらず、日常生活の支援やメンタルヘルスケアの面でも大きな役割を果たします。
現場での誤解や不安を未然に防ぐためにも、リアルタイムかつ双方向の円滑なコミュニケーション手段の導入が重要です。さらに、採用前の段階から現地の送り出し機関と連携し、日本語だけでなく、日本の生活習慣や文化、マナーなどについても事前教育を施すことで、来日後のトラブルやミスマッチのリスクを軽減することができます。
来日後においても、企業、登録支援機関、送り出し機関が密に連携し、シンハラ語で相談できる窓口の設置や、定期的なフォロー面談の実施により、外国人材の不安や問題を早期に把握・対応することが求められます。
ObotAIでは、特定技能人材や技能実習生などの外国人材と受け入れ企業向けに、AI翻訳ソリューションを提供しています。
さらに、スリランカ人材の採用から教育、定着支援までをワンストップで手がける現地送り出し機関「株式会社AKARI」との業務提携を通じて、外国人材に特化した人材紹介および登録支援サービスも展開しています。
画像出典:株式会社AKARI
スリランカ現地の送り出し機関「株式会社AKARI」では、全寮制の自社トレーニングセンターを運営し、日本語の習得にとどまらず、生活マナーや清掃・ごみの分別など、日本での暮らしに欠かせないルールや習慣まで細やかに指導しています。
また、日常生活における所作や立ち振る舞いも実践的に教育しており、日本社会へのスムーズな適応をサポートしています。
さらに、毎日の運動プログラムを通じた体力づくりのほか、介護分野を志す人材に向けては国家資格であるNVQ3の取得支援も行っており、入国時点で日本語能力試験N3相当の語学スキルを身につけているケースが約90%に達しています。
送り出し後も、生活面・キャリア面での悩みに対応できる専用相談窓口を設置し、現地との連携を保ちながら、継続的なフォローアップ体制を整えている点も大きな強みです。
当社が提供する、リアルタイム通訳アプリ「Minutz」や、連携翻訳・学習支援ツール「チャットブリッジ」など、24時間365日対応可能な先進的サポートと組み合わせることで、外国人材の定着率向上に向けた包括的な支援が実現可能となります。
質の高いスリランカ人材をお探しの企業様は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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まとめ
特定技能制度を活用したスリランカ人材の受け入れは、特に介護や建設業、製造業などで顕著に増加しており、今後もその傾向は続くと予想されます。
しかし、受け入れに伴う課題も少なくなく、言語や文化の違い、労働条件の理解不足などによるトラブルも報告されています。
そのため、スリランカ人材の受け入れに成功するためには、双方の連携と企業の積極的な準備が不可欠です。
AI翻訳ツールの活用や、現地送り出し機関との連携による教育・支援体制の整備により、スリランカ人材の能力を最大限に引き出し、企業の人材確保と現場の安定に直結します。
当社では、特定技能外国人とのスムーズな意思疎通が実現できる支援ツール「チャットブリッジ」と「Minutz」を提供しています。
どちらのツールも、企業と外国人労働者双方にとってスムーズな意思疎通を実現できるものとなっているので、ぜひご活用ください。
また、特定技能外国人・技能実習生等の外国人材と受け入れ企業に特化したAI翻訳ソリューションの開発と併せて、外国人に特化した人材紹介と登録支援機関事業も行っています。
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企業が必要としている支援内容を把握し、最適なプランをご提案させていただきますので、特定技能外国人の受け入れをご検討中の企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。