インバウンド業界は、2022年10月に水際対策が緩和され、その後順調に回復を続けています。
日本においても、東京や大阪といった都市部だけでなく様々な場所に外国人観光客が訪れるようになってきています。
しかし、注目したいのが、旅行の在り方にも変化が起きているという点で、特に自治体におけるインバウンド観光は、これまでとは異なる課題と機会に直面しています。
本記事では、自治体が直面するインバウンドの課題、需要の変化、そしてこれからの自治体が取り組むべき対策と成功事例を詳しく解説します。
目次
コロナ禍中はインバウンド需要が落ち込んでいましたが、現在は、以前のような賑わいが戻りつつあり、2023年訪日外国人旅行消費額(確報)は、5兆3,065億円と過去最高になっています。
しかし、多くの自治体は依然として、さまざまな課題に直面しています。
ここでは、自治体のインバウンドにおける課題となっている、「公共交通機関」「インフラ環境」「多言語対応」について詳しく解説します。
インバウンド観光客にとって、公共交通機関の利便性は重要なポイントです。多くの自治体で、駅やバス停の案内表示が日本語のみであり、外国人観光客が目的地にたどり着くことが困難な状況があります。
また、電車やバスの時刻表、運賃情報が外国語で提供されていないことも問題です。これにより、特に初めて日本を訪れる観光客は不便を感じやすく、観光体験の質が低下します。
さらに、地方の公共交通機関は都市部に比べて本数が少なく、不便な場合が多いです。これらの課題を解決するためには、多言語対応の案内表示の拡充、外国語によるアプリやウェブサイトでの情報提供、そして地方自治体においては公共交通機関の利便性向上が求められます。
自治体がこれらの課題にどう対応するかが、インバウンド観光の成功に直結する重要な要素となっています。
インバウンド観光の拡大には、インターネットの利用環境整備とキャッシュレス決済環境の整備が不可欠です。
訪日外国人観光客にとって、無料Wi-Fiの提供は情報収集やコミュニケーションの必須要素となっています。しかし、Wi-Fi環境が整っていない地方も少なくないので、観光客は不便を感じることがあります。
また、キャッシュレス決済の普及は、特に若い世代の外国人観光客にとって重要です。日本国内ではまだ現金が主流ですが、海外ではクレジットカードやデジタル決済が一般的であり、このギャップを埋める必要があります。
自治体は、公共スペースや観光施設での無料Wi-Fiエリアの拡大、店舗やサービス業での多様なキャッシュレス決済オプションの導入を進めるなど、インフラ整備を行うことで、訪日観光客にとっての利便性を高め、地域の魅力を向上させることに繋げることができます。
インバウンド観光における多言語対応は、外国人観光客の満足度を大きく左右する要素です。多くの自治体では、案内看板、パンフレット、ウェブサイトなどの情報提供が日本語中心であり、英語や他の言語での情報が不足しています。
この言語の壁は、訪日外国人旅行者にとって大きな不便を生じさせ、観光体験の質を低下させる可能性があります。特に、緊急時の情報提供や医療機関での対応など、安全に関わる情報の多言語化は急務です。
自治体は、観光情報の多言語化、多言語対応スタッフの配置、翻訳アプリや音声翻訳機器の導入など、外国人観光客が安心して旅行できる環境を整備することが重要です。
また、文化的背景や習慣の違いを理解し、それに対応するための教育も不可欠です。こうした取り組みにより、外国人観光客が快適に滞在し、地域の文化や魅力を深く理解できるようになります。
コロナ禍中の2020年訪日外国人旅行者は、日本政府観光局の調査結果「訪日外国人旅行者数・出国日本人数」によると、412万人でしたが、2023年は2,507万人に増加しました。
ここでは、「宿泊業」「小売業」「飲食業」「交通機関」におけるコロナ禍がもたらしたインバウンド需要の変化と今後に向けた課題について解説します。
宿泊業界は、コロナ禍により、もっとも大きな打撃を受けました。そのため、多くの宿泊施設は、衛生管理を徹底して安心感の提供に努め、オンラインでの販売促進やリモートワークに対応した宿泊プランの提供など、新たな取り組みも行われました。
また、感染対策や人手不足の影響から、ITシステムの導入が進み、効率化が進みました。
今後も、感染対策の徹底と、急増する訪日外国人旅行者に対する業務効率化の取り組みとして、お客様からのお問い合わせにAIが自動で回答する多言語対応のチャットボット導入などが必要となっていくでしょう。
小売業は、コロナ禍によるインバウンド需要の減少で、影響を大きく受けた業界です。外国人観光客向けの商品やサービスを主要な収入源としていた店舗が、顧客の激減に直面し、多くの小売業者は、在庫の過剰や売上減少に苦しみました。
しかし、この状況は新たなビジネスモデルへの転換を促す機会ともなり、オンライン販売へのシフト、国内消費者向けの商品開発、デジタルマーケティングの強化などを行った業者もいます。
そして、コロナ禍を経て、顧客ニーズは多様化したため、それぞれの顧客に対応した最適な販売方法を模索し、目的に応じたシステムを導入していく必要があります。
また小売業界も、訪日外国人旅行者の増加などに伴い、人手不足が深刻です。アナログ的な手法から「デジタル化」「DX化」を推進していくことで、人手不足などの課題を解決していくことが求められています。
飲食業界は、コロナ禍で新しい取り組みを迫られ、従来の営業モデルを見直し、テイクアウトやデリバリーサービスの導入、地元の顧客をターゲットにしたメニューの開発などが行われました。
2022年10月に水際対策が緩和された後は、順調に回復を続け、2023年訪日外国人旅行消費額(確報)は、5兆3,065億円と過去最高となりました。
観光庁が調査した訪日外国人の消費動向では、「今回の日本滞在中にしたいこと(複数回答可)」では、「日本食を食べること」(98.0%)、「ショ ッピング」(85.6%)、「繁華街の街歩き」(76.5%)の順で選択率が高くなりました。
このような結果からも、日本食は、訪日外国人旅行者に高い需要があり、日本に訪れる際の目的になっています。
そのため、飲食店は、言語の壁や文化・宗教の違いを超えて、メニュー・店頭ポップの多言語対応やヴィーガン・ハラールメニューの展開など、外国人観光客のニーズに合わせたアプローチをしていくことが収益拡大の鍵になっていきます。
また、集客面では、グルメサイトやお店のホームページ、SNSを多言語対応する飲食店も増えてきています。
コロナ禍に伴うインバウンド需要の減少は、交通機関にも深刻な影響を与え、特に、国際線の減便や運休が続き、空港や鉄道会社は大きな収入減を経験しました。
また、外国人観光客向けのチャーターバスや観光バスサービスも大幅に利用者が減少しました。これらの状況に対応するため、交通機関は事業の多角化や新しいサービスの提供を模索しました。
例えば、地域住民向けのサービスの強化や、デジタル技術を活用した非接触型サービスの導入、柔軟な料金体系の見直しなどです。
観光需要が戻りつつある現在ですが、人口密度の低い地方では、人口減少やWeb会議の普及等による長距離移動の減少などにより、回復が難しい路線もあります。
そのため、今後はキャッシュレス決済の導入など、「デジタル化」「DX化」をさらに加速させていくことが必要です。
インバウンド観光の未来を見据え、自治体が取り組むべき対策は多岐にわたります。特に、デジタルトランスフォーメーションの進展、サステナビリティへの取り組み、新たな観光戦略の構築が重要です。
ここでは、これらの対策について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、インバウンド観光の未来において重要な鍵を握ります。多くの自治体では、観光情報のデジタル化に力を入れています。これにより、ウェブサイトやスマートフォンアプリを通じて、多言語での情報提供が可能になります。
また、バーチャルツアーやオンライン体験など、新しいデジタルコンテンツの開発も進んでいます。これらの取り組みは、特に海外からの観光客が訪れることが難しい現状において、地域の魅力を伝え、興味を喚起する手段として有効です。
さらに、ビッグデータの分析を活用したマーケティング戦略の強化も行われており、より効果的な観光促進が期待されています。
デジタル化は、インバウンド観光の新たな可能性を開くと同時に、地域経済の活性化に貢献する重要な要素となります。
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サステナビリティへの取り組みは、インバウンド観光における新たな潮流となっています。
近年、多くの自治体が、環境に配慮した観光の推進に力を入れています。これには、地域の自然や文化を保護しながら観光客を迎えるエコツーリズムの開発が含まれます。
例えば、自然保護区域でのガイド付きツアーや、地元の伝統文化を体験するプログラムなどが挙げられます。これらの取り組みは、地域の持続可能な発展に貢献するだけでなく、訪れる観光客に独特な体験を提供します。
また、地元の産品を活用した観光商品の開発や、環境に優しい交通手段の導入も重要です。サステナブルな観光は、地域の魅力を長期にわたり維持し、観光客に新しい価値を提供する鍵となります。
旅行者のニーズは常に変化しており、安全性や個性的な体験を求める声が高まっています。これに応えるため、自治体は地域固有の文化や自然を生かしたユニークな観光プログラムを開発することが重要です。
例えば、地元の食文化を紹介するフードツアーや、伝統工芸のワークショップなどが考えられます。
また、観光客の健康と安全を最優先に考慮した衛生対策の徹底も必須です。オンラインを利用した予約システムの充実や、非接触型サービスの導入も、安心して旅行を楽しむために欠かせない要素です。
こうした新たな観光戦略は、地域の魅力を再発見し、長期的な観光振興につながります。
各地の自治体では、インバウンド観光客を惹きつけ、滞在を快適にするための多様な取り組みが行われており、インバウンド観光の質を高め、地域経済に貢献しています。
ここでは、自治体で行っているインバウンド対策の事例をご紹介します。
多言語対応ツールの導入は、インバウンド観光におけるコミュニケーションの壁を低減するために不可欠です。
自治体では、観光案内所、ホテル、レストランなどで多言語対応が進められています。これには、多言語対応の案内板、パンフレット、電子ディスプレイ、音声翻訳アプリの使用などが含まれます。
このような取り組みは、訪日外国人旅行者が地域の文化やサービスを容易に理解し、楽しむことを助けます。
また、多言語ウェブサイトやアプリの開発は、事前の情報収集や現地でのサポートに大いに役立ちます。多言語対応は、訪れる観光客の満足度を高め、リピーターを増やす鍵となります。
当社でも、多言語AIチャットボット「ObotAI」の提供をしており、多くの自治体や企業で導入されています。
クーコム株式会社では、訪日外国人観光客向けのレンタカー予約サイト「TOCOO!」に多言語AIチャットボット「ObotAI」を導入しています。
TOCOO!に導入されているAIチャットボットは、英語・韓国語・中国語(繁体)・タイ語に対応しており、ネイティブスタッフ監修の精度の高い多言語AIチャットボットが、顧客からの問い合わせに迅速に対応し、サービスの質の向上を実現しています。
さらに、株式会社 ObotAIでは、自国の言語で送受信するだけでコミュニケーションが簡単にチャットできる「翻訳チャット(有人対応)」も提供しています。
岡山県岡山市では、定額減税補足給付金(調整給付)についてのお問い合わせ窓口の一つとして、多言語対応の有人チャット「翻訳チャット」を導入しています。
翻訳チャットは、URLまたは二次元コードからチャット画面に入ると、多言語でのお問い合わせができる自動翻訳機能付きのリアルチャットサービスです。
オペレーターも「翻訳チャット」を利用して、リアルタイムで多言語のお問い合わせに対応し、業務効率化を促進しています。
※翻訳チャットは月額2万円から利用可能
現代の観光では、無料Wi-Fi環境の提供が不可欠な要素となっています。自治体によっては、公共の場所や観光地において無料Wi-Fiスポットを設置し、訪れる観光客にインターネットアクセスを容易に提供しています。
これにより、観光客は地図の閲覧、情報検索、SNSへの投稿などを手軽に行えるようになります。
また、多言語対応の観光情報アプリや翻訳サービスへのアクセスも容易になり、言語の壁を低減します。無料Wi-Fiの普及は、観光客の満足度向上に直接的に寄与し、地域の魅力をより広く伝える助けとなっています。
このようなデジタルインフラの整備は、インバウンド観光の競争力を高める上で欠かせない戦略です。
総務省は、訪日外国人旅行者を中心とした観光客や地域住民等に向けて、無料公衆無線LAN(無料Wi-Fi)を新たに整備しています。
Wi-Fi環境を拡充・強化したりすることを予定している自治体に対して、先行事例をベースに、具体的な手法やノウハウ、留意すべき事項等の概要をまとめた「【参考】 自治体Wi-Fiの整備・利活用の留意事項」を提供しています。
日本では、まだまだ現金支払いが主流ですが、海外ではキャッシュレス化が進んでおり、キャッシュレス決済は、インバウンド観光の利便性を高める重要な要素です。
多くの自治体では、観光地や店舗、レストランなどでのキャッシュレス決済オプションの拡充に取り組んでいます。これにより、クレジットカードやスマートフォン決済、QRコード決済など、さまざまな方法での支払いが可能になり、特に海外からの観光客にとっての利便性が大幅に向上しています。
また、キャッシュレス決済の導入は、決済の迅速化と管理の効率化にも寄与し、地域経済の活性化にも繋がります。自治体のキャッシュレス化の進展は、観光業界の競争力を高めるための重要なステップです。
経済産業省では、各自治体が円滑にキャッシュレス化を進められるように「公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス決済導入手順書」を取りまとめています。
インバウンド観光客に対する医療機関の情報発信は、安心して旅行を楽しむために重要な役割を果たしています。
多くの自治体では、訪日外国人旅行者が利用しやすい医療機関の情報を多言語で提供しています。これには、ウェブサイトやアプリ上での病院の位置情報、診療科目、言語対応状況などが含まれます。
また、外国語対応が可能な医療スタッフの配置や、通訳サービスの提供も進んでいます。これらの情報発信は、万が一の健康問題や緊急事態に対応するための重要なガイドとなり、観光客に安全な旅行体験を提供します。
観光庁では、訪日外国人旅行者がスムーズに医療機関にアクセスできるよう、外国人患者を受け入れる医療機関を日本政府観光局(JNTO)ウェブサイトに多言語化(英語・中国語(簡体字/繁体字)・韓国語)を行い、掲載しています。
【日本政府観光局(JNTO)ウェブサイト】
また、千葉県では、外国語版の公式観光情報HP内で外国人向けに観光情報等に対応した外国語特設HP「Visit Chiba」を開設したと同時に、弊社の多言語AIチャットボット「ObotAI」を導入しています。
こちらのサイトでは、千葉県の観光情報に加え、医療機関検索などの安全・安心に関する情報にも対応しており、外国人観光客の利便性向上に繋げています。
本記事では、自治体におけるインバウンド観光の課題と対策、成功事例をご紹介しました。
公共交通機関の改善、インフラのデジタル化、多言語対応の強化など、様々な面での取り組みが重要となり、新たな観光戦略の策定や更なるDXの推進に取り組むことが求められます。
これらの取り組みは、地域の魅力を高め、インバウンド観光をさらに活性化させる可能性を秘めています。
お役立ち資料:次世代VRボットを活用した多文化・観光DXのご提案
当社では、自治体のインバウンド対策におすすめの、多言語AIチャットボット「ObotAI」を提供しています。
【ObotAI紹介動画】
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ObotAIは、海外スタッフが育成する「信頼の多言語AIツール」となっており、データ作成やチューニングを行う際には、誤回答がないよう、ネイティブスタッフが作成しています。
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