「顧客体験(以下、CX)」とは、消費者が商品やサービスを認知する段階から、商品の購入、その後の利用の中で得られる一連の体験を意味します。
ECサイトにおいて、このCXを高めることがとても重要です。
そこで、この記事では、CXが注目される理由やECサイトでCXを向上するメリット、そしてCXを向上するためのツール10選をご紹介します。
顧客体験(CX)の向上ツールに注目が集まっている理由
CX向上ツールに注目が集まっている理由は、「消費者ニーズが今までになく多様化しているから」です。
メーカーや小売が一方的に情報発信する時代とは違い、現代では消費者自身も発信し、インターネット上には膨大な量の情報が溢れています。
そして、多くの消費者が「自分に合った商品・サービスがあるのではないか?」と考えるようになり、自ら情報収集・分析するようになりました。
これによって、消費者ニーズは多様化し、CXを向上することで消費者を自社の商品・サービスに惹きつけ続ける取り組みが重要だと考えられるようになりました。
また、様々な市場が飽和状態になり、似通った商品・サービスが多く存在します。
そうした市場の中で、他社の商品・サービスと差別化を図るには、CXを向上し、他にはない体験的価値を提供するのが効果的と考えられるようになったのも理由の1つと言えます。
【ツールを活用】顧客体験(CX)の向上により期待できるメリット
CXの向上により、期待できるメリットは多くあります。とりわけ大きなメリットが、次の3つです。
・顧客ロイヤリティとLTV(顧客生涯価値)が高まる
・ブランドイメージが上がり顧客をファン化しやすい
・高評価のクチコミが広がりマーケティングになる
ここでは、上記3つのメリットを1つずつ解説します。
顧客ロイヤリティとLTV(顧客生涯価値)が高まる
顧客ロイヤリティとは、「自社の商品・サービスやブランドに対する消費者の愛着心」のことです。
ロイヤリティの高い顧客は、商品・サービスを長く利用し、繰り返し購入(リピーター化)する可能性が高いため、自社のLTV(顧客生涯価値)を高められます。
LTVとは、「消費者が自社の商品・サービスを利用し、購入し続ける間にもたらす収益」を意味します。
LTVが高いECサイトほど、高収益体質だと言えます。CXを高めると、商品・サービスの購入や利用にあたって、消費者はストレスなく快適な体験を得ることができます。
これが、顧客ロイヤリティの向上につながり、ひいてはLTVの向上を促すかもしれせん。
最終的には「CXの向上=収益アップ」という図式が成り立ちます。
ブランドイメージが上がり顧客をファン化しやすい
商品・サービスの購入や利用にあたって、快適な体験を得られると、消費者は同じ商品・サービスを繰り返し購入・利用するようになります。
つまり、「自社ブランドに対するイメージがアップし、消費者がファンになりやすい」ということです。
アメリカを拠点とする、Watermark Consulting社が行った調査によると、CX向上へ積極的に取り組んでいる企業とそうでない企業とでは、リピーター(ファン)の獲得率に3倍以上の開きがあることがわかっています。
画像出典:The Customer Experience ROI Study|watermark
CX向上へ積極的に取り組む方が、ECサイトにおいてファンの獲得率が上がりやすいと言えます。
高評価のクチコミが広がりマーケティングになる
消費者がECサイトのファンになると、リピート率や収益が増えるだけでなく、商品・サービスやブランドに対する高評価のクチコミを、SNS等で発信してくれる可能性があります。
クチコミは、ほとんどの消費者にとって重要な情報源となっており、商品購入を検討する際は、クチコミサイトやSNSを活用し、商品に対する他の消費者の意見を収集します。
高評価のクチコミが多ければ、商品購入を後押しすることになります。
このように、CX向上に取り組むと、顧客ロイヤリティやLTVの向上や消費者のファン化にとどまらず、マーケティングが自動的に回る仕組みがを作れるかもしれません。
顧客体験(CX)の向上が期待できるツール10選
ECサイトにおいて、CX向上へ取り組むためには、CX向上のためのツールが欠かせません。
ここでは、CX向上が期待できるツール10選をご紹介します。
チャットボット
チャットボットとは、消費者がチャットに送信した問い合わせ内容に応じて、最適な返答を自動的に行うためのツールです。
AIが搭載されているものとされていないものが存在し、AIが搭載されているチャットボットは、問い合わせ数が多くなるほど返答精度が上がり、CX向上の効果が期待できます。
Web接客ツール
Web接客ツールとは、ECサイト上でチャットを使って、消費者とスタッフがリアルタイムにコミュニケーションを取るものです。
実店舗のような接客をECサイトに取り入れることで、消費者が欲しい情報を素早く提供し、CX向上に貢献できます。
行動分析ツール
行動分析ツールとは、ECサイト上で消費者がどのように行動しているかを可視化するためのものです。
ECサイトにおける消費者行動を可視化できれば、「どのように購入に至ったのか?」または「どこで離脱したのか?」などを詳細に分析できます。
分析結果に応じてECサイトを改善すれば、より快適な購買体験をデザインし、CXを向上できるかもしれません。
CRMツール
CRMツールとは、「顧客関係管理」の略であり、消費者1人ひとりの情報を細かく管理するためのものです。
消費者ごとに合わせたマーケティングやプロモーションが可能となり、CXの最適化に役立ちます。
ただし、CRMツール単体ではなく、MAツールなどと組み合わせる必要があります。
MAツール
MAツールとは、「マーケティング・オートメーション」の略であり、マーケティング業務の一部を自動化するためのものです。
商品閲覧中のレコメンドやクーポンのポップアップ配信、ECサイト上での行動に合わせた自動メール送信など、マーケティングを自動化する機能が整っています。
CRMツールとあわせて利用し、CXの最適化に期待できます。
BIツール
BIツールとは、「ビジネス・インテリジェンス」の略であり、膨大な量のデータの解析・レポートを自動的に行ってくれるものです。
ECサイト運営のために利用しているツールから生成されるデータを集め、自動的に解析し、出力されたレポートを参考に、次のECサイト戦略を考えることができます。
ヒートマップツール
ヒートマップツールとは、消費者がECサイト上のどこに注目し、どこをクリックしているのかをサーモグラフィーのように視覚化するものです。
他のCX向上ツールとは違った視点で、消費者の行動分析が行えるため、CX向上に役立つ情報を発見できるかもしれません。
EFOツール
EFOツールとは、「入力フォーム最適化」の略であり、商品購入にあたって、欠かせない入力フォームを改善するためのものです。
面倒でストレスの多い入力フォームは、離脱率が高い傾向があります。
つまり、入力フォームを最適化すればCXを向上し、離脱率低下に貢献できるかもしれません。
EFOツールには、そうしたCX向上のために、入力フォームを簡単に作成できる機能や、入力支援機能(住所の入力補助など)が備わっています。
ワイヤーフレームツール
ワイヤーフレームツールとは、ECサイトデザインのベースになるワイヤーフレームを素早く作るためのものです。
ワイヤーフレームツールには、テンプレートが用意されており、デザイン性が高くCX最適化につながるワイヤーフレームを短時間で作成できます。
Google系ツール
Googleは、ECサイトのCX向上に役立つ無料ツールをいくつか提供しています。
Googleスピードインサイト | ECサイトの表示スピードをスコア化し、 改善点を教えてくれる |
Googleアナリティクス | ECサイトの訪問数や離脱率、 滞在時間など様々な指標を確認できる |
Googleデータポータル | Googleアナリティクスのデータや、 CSVファイルをインポートして 様々なデータ分析が行える |
これらのGoogle系ツールを使うことで、ECサイトのCXを阻害している問題点や、CX向上に向けた改善点を見つけることができます。
まとめ
本記事では、CX向上のメリットやCX向上に最適なツール10選をご紹介しました。
ECサイトのCX向上への取り組みにおいて、まず大切なのは「CXがなぜ重要か?」を深く理解することです。
一口にCX向上といっても、様々な取り組み方があります。
したがって、「CXを向上すると自社ECサイトでは何が起きるのか?」という具体的なイメージが膨らんでいないと、最適なCX向上には取り組めません。
まずは、自社ECサイトのどこにCXを阻害する問題点があるかを把握し、その問題点を改善するとECサイトで何が変化するのか、ということを考えてみてはいかがでしょうか。
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